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『木のこと The TREE』:南果歩インタビュー

2024年07月10日 (水)

Music Program TOKYO シアター・デビュー・プログラム
『木のこと The TREE』
南果歩(出演)インタビュー

取材・文:高橋彩子(演劇・舞踊ライター)

劇作家のペヤンヌマキが脚本・演出を、作曲家の林正樹が音楽監督・作編曲を手掛ける『木のこと The TREE』が、まもなく開幕する。第一線で活躍するアーティスト達が青少年向けのオリジナル舞台作品を送る「シアター・デビュー・プログラム」としての上演だ。女の子の誕生とともに植えられた木と、これを取り巻く人間の営みを描く本作。3世代にわたる「女の子」と「老婆」を演じる南果歩に聞いた。

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——いよいよ開幕です。どのような舞台になりそうですか?

『木のこと The TREE』は、最初にプロットを渡され、お稽古場で立ち上げて、そこでの私達の様子を見ながらペヤンヌさんが具体的なテキストを作る、といった具合に、全員参加型のような形で作っていった作品です。演劇と音楽とダンスがしっかりと融合しているので「シアター・デビュー・プログラム」にぴったりなのですが、子供が見て楽しいものは絶対に大人も楽しめる。だから、幅広く楽しんでいただけるのではないかと思います。

——南さんはその中で、女の子1/2/3と老婆を演じられます。

そうなんです。7歳の女の子を演じ、その子が17歳になって、次世代の14歳、次世代の50代、そして何世代か先の老婆までを演じます。一人の女の一生ではなく、幾時代かの色々なジェネレーションを、70分の舞台の中で演じられることが、愉しくてなりません。

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——女の子に名はなく、どこか象徴的な雰囲気もある一方、ペヤンヌさんが被爆者の女性から直接聞いた木のエピソードなどが取り入れられ、日本の近代の歴史を具体的に背負うところもありますね。

2代目の女の子の時に空襲を経験するのですが、そこでは「爆弾が落ちたの」と言うセリフが、次の世代の時には「爆弾が落とされたの」になっていますし、服装は一貫してワンピースですが、私の発案で戦時中はみんながつけていた名札をつけるなど、ちょっとしたニュアンスで時間の経過がわかるようになっています。

——少女から老婆までを一人でというのは、演じるのが南さんだからこその設定だと思います。お若い頃から老婆も演じられる俳優でいらした気もしますが、今演じるとまた違う感覚もあるのではないでしょうか?

若い頃は達観しているようなところがあり、老けていたと思います(笑)。でも年齢を重ねていくうち、今度は幼いところが目立ってきて。自分の中の年齢と世の中とのギャップが常にあるんです。世の中からは「もう60歳だから」と言われるのでしょうけれども、私の中に少女がいるので、少女らしく見せようとしなくても演じることができます。と同時に、今回老婆が後の世代を想って口にする台詞は生命体として理解できて、いいセリフだなあと味わいながら口にしています。

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——舞台『これだけはわかってる~Things I know to be true』では家族に大変な問題が次々と起きる中、南さん演じる母親はまっすぐ立っていらっしゃるような印象がありましたし、今回の作品も、また全然違う世界ではありますが、激動の時代を背景にしつつシンプルに存在されるのだろうと想像します。そういうあり方が南さんにはお似合いだな、と。

嬉しいですね。ペヤンヌさんが表現する世界観は非常に詩的でもあります。だから、言葉で風景が見え、その情景の変化していくさまも言葉の力で浮かび上がってきて、さらにそこに、聴き慣れた名曲から林さんのアレンジされた曲まで様々な音楽が加わるので、広がりのある世界になるはずです。私は、短い物語に集約された世界観がとても好きで、被災地限定の幼稚園、保育園、小児病棟などで、読み聞かせボランティアをやっているのですが、今回は自分自身が絵本の中に生きているような感覚がありますね。読み聞かせリアルバージョンというか演劇バージョンというか。飛び出す絵本どころか動き出す絵本だと思っています。

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——最終的にどんな舞台を届けたいですか?

『木のこと The TREE』は、何世代にもわたる人間のバトンリレーの話ですが、そこで大切なのは、次はどんな時代になっているだろうか、今日残すことで次世代がどう変わっていくのか、と想像し、優しさを渡していくこと。それを描いた作品だと思うんです。私自身、家の近くの電線に引っかかっている大きな木があって、危ないから伐らなければいけないんじゃないかと考えていたのですが、この作品に関わってから、伐る以外の方法があるんじゃないかというふうに考え方・見方が変わってきました。そういうふうに影響を受け合うって大事なこと。生身の人間の波動が伝わる劇場空間で、小さいお子さんも、かつて子供だった大人も、日常から離れて刺激を受けて、それぞれの日常に戻った時には何かそれまでと違う発想や好奇心を持っていただけたら嬉しいです。

 

シアター・デビュー・プログラム
『木のこと The TREE』
2024年7月12日(金)19:00開演/7月13日(土)14:00開演
東京文化会館 小ホール
公演情報