ピアノ部門の審査委員をしていただいているピアニストの小山実稚恵さんと清水和音さんに第3回の審査についてお話をお伺いしました。応募をお考えの方は是非ご一読ください。



第3回東京音楽コンクール審査委員を引き受けてくださいまして、ありがとうございました。いかがでしたか。

清水−北村君というすばらしい才能が見つかったことに、とても意義があったと思いますね。スターが一人見つかったということで、いいんじゃないかな。

小山
−私も全く同感で、演奏というのは基本的に自由だし、その人らしさが出るのが一番だから、若くて、輝かしい未来が見えるような演奏を聴けたので、すごくよかったなと。

今後、コンクールに参加する方へのアドバイスとしてお伺いしたいのですが、MD審査では、42名の演奏を長時間に亘り聴いていただきました。MD審査合格のポイントはどんなところだったのでしょうか。

清水−録音がいいこと、楽器がいいこと、調律ぐらいしてあること(笑)。それが最低条件で、ひどい状態の録音だと、おそらく損するでしょう。あまりにも残響がなかったりすると、よく弾いていてもあまり上手に聴こえないということがありますし、録音場所によっては不公平な部分があるとは思うんですけれども、それは参加する方の意識の高さに期待するしかないです。

小山
−私も同感です。姿が見えない状態で、それぞれ録音状態の違う演奏の音だけを聴くということは、とても難しいことでした。できる限り音に集中して聴いたつもりですが、MDだと、録音された部屋や楽器の状態とか空間とか、どうしてもつかみきれない部分がありました。次回は、なるべく自分の演奏がいい形で録音されているようなもの、そして自分らしさの出ている演奏を提出してほしいと、本当に切に思います。

清水−切に思いますね。本当に。外に行くときはちょっとお洒落をしよう、ぐらいの意識はあったほうがいいと思いますね。

第2次予選、本選の公開審査では、どのようなポイントを評価されたのでしょうか。

清水−そもそも最初から、自分が最も得意だとするレパートリーを演奏してほしいということで、今回の課題曲を減らしたわけなんですけれども、必ずしも得意ではない曲を弾いていた人が結構いたということは、ちょっと残念だったかな。もうちょっと自分の適性というものを判っていたほうが得すると思いますね。この子は他の曲を弾いたらもっと良かっただろうなと思う人は何人かいました。
もうちょっと現実的に考えた方が、コンクールの場合はうまくいくと思いますね。というのは、僕らは仕事になったら得意なものしか弾かないわけですから、審査員がすべてピアニストということで、非常に現実的な判断をしました。一般的に考えられるように、すべてのレパートリーをちゃんと勉強しなければいけないということは、必ずしも僕らは思っていないわけです。ですから、自分の最も魅力的だと思えるものを、もう少し自分のことを判るということかな。この判断力をもうちょっと身につけていただきたいなと、そう思います。
  


小山−ピアノ曲で言えば、膨大なレパートリーが必要であるし、また、いい曲がたくさんあります。今、和音さんが言われたけど、どういう曲を自分が本当に弾きたいか、プログラムとして組むかということは、実際、演奏する以上に大事な部分なので、いろんな意味でもう少し気を配ってもらうとすごくいいのかなと思います。果たして、自分が得意とするものだけを出すのがいいのかどうなのか、ということは、ちょっと難しい問題ですけれど・・・少なくとも自分が選んだ曲に対しては、自分が責任をもって愛情を注いで弾く。それから、コンクールの場であっても人前で弾く意識、コンサートと同じような気持ちが自分の中にあることが大切なんじゃないかなと思います。

今度は、お客様へのアドバイスをお願いいたします。本選のアンケートを拝見しましたら、審査員気分を味わっていらっしゃる方が多いように見受けられました。お客様がコンクールを楽しむためのご提案がありましたら、お願いいたします。

清水−それこそ審査員気分を味わうのも楽しみの一つでしょうし、これから世の中に出てくる若者たちに興味を持っていただくというのはすごくありがたいことです。だから、来年は聴衆賞をつくったらどうだろうと、僕は個人的には考えているんですけれどもね。それによってまた楽しみ方が違う。もう一つ楽しみ方が増えるかも知れませんし。
ただ、批評、批判ではなくて、サポーターであってほしいなという気持ちはありますね。この業界に一番足りないのはサポーターですから、このコンクールで出てきた子たちが世の中に出てきた時も、ずっと聴いていってほしいですね。僕らはずっと仕事をやってきて、いいとき、悪いとき、いろいろあります。例えば、自分の贔屓のサッカーチームが負けたって、次の試合に行きますよね。勝ち負けの世界ではありませんけれども、長い期間、ずっと自分の気に入った演奏家を応援してほしいなと、そう思いますね。

小山
−自分の演奏というのは誰よりも本人が痛いほど判っているし、いろいろ感じているものなんです。そこで応援の拍手があったり、会場内の雰囲気が温かいものであるということはすごく重要なことなんですよね。またそれがもとでいい演奏にも繋がったりするということもあるから、応援の気持ちを持って、足を運んで聴きに来てくれる、そういう聴衆の人が増えたらいいなと思います。これはコンクールだから、審査はしなければいけないんだけれども、でも、弾くほうは、いろんな人が客席にいてくだされば嬉しいから、たくさん応援に来てもらえたらいいなと、そういう気持ちでいっぱいです。そしてちょっと欲張りですが、広く長い目で応援してもらいたいですね。

清水
−コンクールでも拍手していいんですからね(笑)。なんか聴衆のほうが、しちゃいけないんじゃないかという雰囲気がある。よかったら「ブラボー」でも、もちろん言ってもいいわけだし、みんなで盛り上げていただきたいなと思いますね。だって、最初、僕が拍手したからみんな拍手し始めたんだもの。

そうですね。北村さんの時は、2曲目の後に、我慢しきれないという感じで拍手が起こりました。

清水−そうそう。ああいう特別な存在はまたちょっと違うんですよ。だけど、どの子たちも1曲ずつ拍手があったってもちろんいいわけですし、ためらわずに参加していただきたいなと思いますね。

ありがとうございました。

(2005年10月7日 音脈Vol.21掲載)