音脈 Vol.65|東京文化会館公演情報 2017年1月~3月
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9音脈2017 WINTER特集・出演者インタビューP10参照公 演 情 報舞台芸術創造事業ストラヴィンスキー「兵士の物語」黒木岩寿取材・文/東端哲也(音楽ライター)(演出・コントラバス)interview 05ストラヴィンスキーの実験的舞台作品が当館に再び登場。博識で知られる黒木岩寿が演出を手掛け、実力派アンサンブルが集結。 この作品の重要な小道具であり、兵士の「良心」の象徴とも解釈できるのがヴァイオリンです。その演奏を担当するのは長年に渡り東京フィルのソロ・コンサートマスターを務められていた名手・荒井英治さん。現代ものから、モルゴーア・クァルテットによるプログレッシヴ・ロックまでレパートリーも幅広く、バンドネオンの三浦一馬くんを囲む演奏メンバーとして既に何度も共演を重ねていて、その実力の程は保証済み。また、トランペットの長谷川智之くんも素晴らしく、明るい旋律を吹いているのに、どこか不吉な匂いのするようなニュアンスを絶妙に出してくれる。そんな選りすぐりの人たちばかりを集めたアンサンブルでまた《兵士の物語》をやれるのが楽しみで仕方ないです。 いろんなことに興味をもって、とことん探究して行くのが好きなんですね。「文化人類学講座」はそんな自分にとってのライフワークにするつもりで始めた企画で、作曲家や作品についてその背景にある歴史や文化、美術・建築などを交えて説明したり、西洋と東洋を比べたり、一見関係ないもの同士を結びつけてみたり、毎回違ったテーマで楽しく学びながら音楽を聴いて貰おうという試みです。まあ面白いアイデアはたくさんあるんですが、それを具体化させるにはきっかけが必要で、でも何と何がどう繋がるか予想がつかないし、時間をかければ必ずみつかるというわけでもない…とにかく勉強を続けるしかないですね。 観客の皆さんの想像力を刺激して、ステージと客席がイマジネーションの世界で一体化するような公演を、ここ東京文化会館の小ホールでも実現したい。ストラヴィンスキー作品が初めてという方にもぜひ、足を運んで貰えたら嬉しいです。―黒木さんにとって最初の《兵士の物語》体験は? 藝大時代に仲間たちと一緒に演奏したのが最初ですね。聴いている分にはおもちゃ箱をひっくり返したような…というか遊園地みたいな楽しい音楽なのですが、譜面を開くとやたら変拍子で凄く難しくて、面食らったのをよく覚えています。それはストラヴィンスキー作品全般に云えることで、東京フィルでもやった《春の祭典》とか、原始のワイルドなエネルギーを感じさせつつも知的かつ現代人の耳にもモダンで、個人的にも大好きなのですが演奏するのはたいへん(笑)。西洋音楽が行き着くところまで到達した、究極の作曲家のひとりだと思います。 自分でも好きでよく観たりずっと勉強している能の世界に「三卑賤」と呼ばれる有名な3曲(阿あこぎ うとう うかい漕、善知鳥、鵜飼)があって、いずれも殺生を業とする漁師の執心による地獄の苦しみを主題にした話なのですが、そこで描かれる人間の「業」と《兵士の物語》が持つテーマに何か通じるものを感じたからなのです。つまり西洋では擬人化される「悪魔」の概念って、日本人にとっては人間の心の中で生まれてそこに巣食う存在なのかなと思って。そう考えると、舞台に登場する兵士や悪魔が能の「シテ方」や「ワキ方」で、朗読者として彼らの台詞や内なる声を担当するのが「狂言方」という分業がしっくりきたんです。 KAMIYAMAくんとはもう15年来のつきあいになるでしょうか。僕がコントラバスを弾いて彼がマイムを演じるデュオの活動をずっと続けていて、いつも難解な現代音楽に合わせて見事な動きで魅せてくれます。一方、旧東ドイツ生まれのウヴェさんは欧州で70年代から活躍する伝説のパフォーマーでありながら、今は京都の山奥に住んで日本の古典芸能にも通じた方。あんな金髪アフロヘアーなのにバリバリの京都弁で流暢に話される(笑)。まさにこれ以上はない最高のキャスティングです。―来年3月に小ホールで行われる公演は、2013年2月に「ムジカーザ」で初演したものがベースになっているとか。「語り手」に狂言方能楽師の安東伸元さん、その弟子の井上放雲さんを「兵士の声」に起用し、「和」のテイストを融合させた演出でも話題を呼んだ、あの舞台がまた観られるわけですね。―兵士を演じたパントマイム大道芸人のKAMIYAMAさん、悪魔役のパフォーマー、ウヴェ・ワルターさんも続投。非常に個性的で存在感のあるお二人です。―実力派の演奏陣からなるアンサンブルもほぼ同じメンバーでの出演が決定していますね。―きっと「ムジカーザ」の時とはまた、ひと味違う《兵士の物語》になりそうですね。―黒木さん自身も、東京フィルハーモニー交響楽団の首席コントラバス奏者として活躍しつつ、自ら企画されたレクチャー・コンサート「文化人類学講座」などでも好評を博している異才の人です。舞台芸術創造事業

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