音脈 Vol.65|東京文化会館公演情報 2017年1月~3月
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音脈2017 WINTER8P11参照公 演 情 報©ND CHOW 《響の森》vol.38「ニューイヤーコンサート2017」小山実稚恵取材・文/柴田克彦(音楽ライター)(ピアノ)interview 042015年にデビュー30周年を迎えてさらに充実を極める名手が雄大な名作を披露。新年のスタートを華麗に彩る!な出だし等には寡黙な人柄が出ていますね。全体に全ての音が聞きとれないほど混み入っていますが、細かな音は重要な音を引き立たせるためにあるのだと思います。洋服に例えれば、質感や形や色が主要で、よく見ると刺繍で細かな柄が施されているようなイメージ。何れにしても、よほどピアノが上手い人でないと作れないでしょう。普通の作曲家が書いたら、奏者から『弾けない』と言われるほど大変なのですが、本人が初演者で素晴らしく弾いているから、それは言えない。その意味で後世のピアニスト魂に火を付けた作品かもしれません」 今回の指揮は、2011年ブザンソン国際指揮者コンクールで優勝後、内外で活躍する垣内悠希。俊英ながらすでに小山とは3回共演し、彼女も信頼を寄せている。 「ラフマニノフの3番は2回共演し、内1回は今回と同じ都響でした。初共演の前には、わざわざ私の家まで打ち合わせに来られましたが、そんなことは初めて。それほど熱心で、音楽に対する愛情もスコアの読みも深い方だと思います。それに本番は集中力が高い上、吹っ切れて解放されますので、一緒に音楽を作る喜びを感じます」 オーケストラは東京都交響楽団。こちらは長く親密な楽団であり、ラフマニノフの3番は、先のデビュー30周年記念公演のほか、ツアー等でも共演している。 「知性と高度な技量が一体となって音楽に推進力を生み出している、素晴らしいオーケストラ。ラフマニノフの3番は、両者が一体となって進む“ピアノ付きの交響曲”ともいえる作品ですから、ご一緒できるのが楽しみです」 東京文化会館とはむろん付き合いが深く、これまでに大小両ホール合わせて40回ほど出演している。 「毎日横を通る藝大生にとっては身近で、当時からの殿堂でもあります。自分のステージもそうですが、聴いた回数は数え切れません。ここは、楽器の音がきちんと響くので、音質の良し悪しが如実に出ます。楽器の空気感やクリアな音楽が自然に伝わる、いわば俳句のように言葉の純度を極めた音が聴こえるホールだと思います」 演奏者、演目、ホールと全てに条件が揃った本公演で、快い新年のスタートを切ろう! 人気、実力ともに日本を代表するピアニスト・小山実稚恵は、新春恒例のニューイヤーコンサートでソリストを務める。演目はラフマニノフのピアノ協奏曲第3番。彼女の十八番の1曲であり、話を聞くと思い入れも深い。 「学生時代から最愛のコンチェルトで、ホロヴィッツの録音等を聴いて、曲への思いは高まり続けていました。ただ以前は、今と違って2番との知名度の差が圧倒的。2番は早期からのレパートリーでしたが、3番は何度オファーを出しても決まりませんでした。ですから最初は1995~6年頃、あるコンサートに無理にお願いして入れて頂いたように記憶しています。それ以来弾いたのは2~30回位。やはり大曲ですし、特別な思いがある分、デビュー20・30周年記年公演など、ここというときに弾くことが多いですね。これまでに、CDも録音したフェドセーエフさんをはじめ数々の指揮者と共演していますが、印象深いのは2015年の2公演。大野和士さん指揮する都響との東京と大阪での30周年記年公演と、広上淳一さん指揮する札響との演奏は忘れられません。今回は新年の最初に好きな曲を弾かせて頂けるのが、とても嬉しいですね」 ラフマニノフの3番は、ピアニズムと音楽の両面に惹かれている。 「大ピアニストだったラフマニノフですから、ピアノの能力がこれ以上ないほど駆使され、あらゆるテクニックが盛り込まれています。また音楽的にも、オリエンタルな雰囲気と新天地アメリカへの思いが融合した新鮮さにそそられます。ラフマニノフは、物凄く器用な面と不器用な面があり、ピアノの技法や楽曲を書く才能はありながら、メンタル面では人の評価が気になって悩みに陥ります。この曲には、その2つの要素を超えた覚悟と希望が織り込まれており、そこが切なくて胸に迫る。第1楽章は、新天地に向けて作ったにもかかわらず、亡命後に第三国から人生を振り返るような思いが感じられますし、2つ書いたカデンツァにかける情熱にも惹かれます。第2楽章はどっぷりとロシアで、第3楽章は新天地アメリカの輝かしい情景。こうした各楽章の役割の違いも魅力ですね」 テクニック的にも弾き甲斐がある作品だ。 「音符がギッチリ詰まって黒々とした楽譜に、本来は自分が話したくて仕方がないとの思いが表れています。ただシンプル響の森

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