音脈 Vol.65|東京文化会館公演情報 2017年1月~3月
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音脈2017 WINTER4白のドレスがそのことを表している。2番目の女は、赤が基調で、だから真っ赤な口紅を塗って、官能性を表に出す。でも彼女、ヴァージンなんですよ。3番目のシーンには2人女性がいるんだけど、一人は臭っていて気持ち悪い(笑)。そっちの臭ってくるほうが死んでしまいます。石井 その気持ち悪いという女性は、原作では腋臭(わきが)があるとかの生々しい描写があるけれど、そういうのも官能の一種ですよね。伊藤 ええ、だからそういうところで男を惹き付けるというのも、面白いと思うし興味があります。石井 じゃあ、もう一人の女性は?伊藤 ただ隣に寝ている。ふつうの女性という感じ。「美しい」とは書いていないんです。2番目のシーンがすごく難しい。というのは、そのシーンのあいだずっと、ほとんど逆さにぶら下がってるんですよ(笑)。いろいろな姿勢をとるのだけれど、頭が下になってぶら下がっているというのがきつい。石井 それは辛そう(笑)。伊藤 本当に辛いですよ!その状態でディテールの表現なんか、大変です。ちょっと寝返りをうつようなところで腹筋を使わなくちゃならないとか…。  小説のなかの女たちは、主人公の老人との関係性のなかで存在している。このオペラでは、男性である老人を「美女」役の彼女はどう受け止めるのか?伊藤 観客すべてが老人たちで、わたしを見つめ、わたしを触っている。自分は観客の獲物にされている感覚ですね。石井 その観客からの視線を、逆にもてあそぶというのもあるでしょ?伊藤 そういうふうにやっています。そこにいろんな形で音楽が入ってくるので、それによって身体のあり方も変容してきます。舞台では原作と違い、わたしは終始ひとりで宙に浮いていて、実際に体を触られたりとかいうのはありません。観客の想像に任せるということです。この作品にはどの要素がメインになっているということがないのです。音楽的なアプローチと演劇的アプローチとダンス的なアプローチが渾然一体となり、観客の想像力に訴えます。石井 音楽、演劇、ダンスがせめぎ合い、混じり合う。まさに一種のトータルシアターですね。今からすごく楽しみです。P10参照公 演 情 報©Kurt Van der Elst東京文化会館開館55周年・日本ベルギー友好150周年記念オペラ 「眠れる美女~House of the Sleeping Beauties~」伊藤郁女取材・文/石井達朗(舞踊評論家)interview 02ベルギーで初演された際、「眠れる美女」を踊っていた伊藤郁女が東京の舞台にも立つ。ヨーロッパで活躍する彼女に話を聞いた。 川端康成の小説『眠れる美女』が、2009年ベルギーで現代オペラとして初演された。エロスが香り立つこの異色のオペラが、東京文化会館開館55周年、日本・ベルギー友好150周年を記念して12月に来日する。演出・振付・美術・衣裳を担当するのはヨーロッパの第一線で活躍のアーティストたち。加えて、日本から俳優の長塚京三、原田美枝子がオペラに初挑戦し、オーディションで選ばれた4人の歌手(ソプラノ2人、メゾソプラノ2人)が加わる。 もう一つの注目は、初演時シディ・ラルビ・シェルカウイの振付で出演していたダンサー伊藤郁女が再び参加することだ。今のヨーロッパで、シェルカウイは新しい世代のダンスの作り手として名実ともにトップランナーである。日本でも非常に評価が高く、新作の一作一作が大きな注目を浴びている(この秋には『sutra スートラ』 が東京と愛知と北九州で公演された)。伊藤と彼との出会いは?伊藤 ラルビとはもう長いあいだの友人です。わたしがプレルジョカージュのカンパニーで踊っていたとき、ラルビが同じホテルに泊まっていて、ホテルが火事になったんです。それでラルビと一緒にホテルから飛び出して、わたしの友達がラルビを知っていたので知り合うことになりました。ホテルの火事がきっかけなんですね(笑)。ラルビとは、二人で何かやりたいねという話はしていたのだけれど、以前の作品では実現せず、『眠れる美女』をやらないかという話になったんです。原作を読んで、眠れる女たちの美しさにすごく惹かれました。そこでオペラ全体の演出をしているギー・カシアスにアヴィニョンで会いました。原作では女たちは眠っているだけだけど、寝ながら、相手に何らかの表情を見せるようなこと、すごく興味がありました。ダンスとして、眠りながら相手を誘うような動きとか仕種とか。  川端の原作では、話は5夜にわたり、5夜目には女性が2人いるので6人の「眠れる美女」がいることになる。オペラは一幕三場、そして「眠れる美女」として舞台にいるのは伊藤郁女だけだ。オペラ作品ならではの魅力を発揮する構造がここにある。伊藤 わたし一人が「眠れる美女」として存在しています。ただしコーラスの4名が、それぞれ違った女性を描写します。わたしは3つのシーンでぜんぜん違った女を演じ分けなければなりません。最初の女はピュア、純粋です。若々しく初々しい。青と(ダンサー)

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