音脈 Vol.63|東京文化会館公演情報 2016年7月~9月
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5音脈2016 SUMMER特集・出演者インタビューP9・P10参照公 演 情 報©Kiyotaka Saito曲からインスピレーションを得てこの曲を書いたらしく、出だしからシューマンのピアノ協奏曲に似ていて、若き日のグリーグの先人への尊敬と大きな曲を書く意気込みとが伝わってきます。でも私は秘かに、グリーグはこの曲を『皇帝』を研究して書いたのだと思っています。第1楽章の冒頭、モチーフの使い方、第3楽章の舞踊的なリズム、そして全体の構成に、『皇帝』の影響を感じます。静かな第2楽章も似てますよね」 指揮の小林研一郎とはデビュー以来、共演を重ねている。 「マエストロ小林とはたくさんのコンサートをご一緒しました。デビューの頃から、日本フィルとのアメリカ公演やヨーロッパ公演、その後もいろんなツアーで。尊敬しているマエストロ。お立ちになるだけで、空気をまとめてしまう。そして、リハーサルのときにおっしゃることが素晴らしいのです。『ベートーヴェンの精神を受け取る肉体がないとベートーヴェンの音にならない』とか。最近、音楽がますますお若くなっています。ですから、共演がとても楽しみです」 また、仲道は、今年も東京音楽コンクールの審査員を務める。 「コンクールは、勲章も大事ですが、その人の成長を応援するのも大切です。入賞者がいろいろな機会をもらえる東京音楽コンクールは素晴らしい。自分の音をちゃんと持っている人、自分が音楽とどう向き合い、どう弾きたいかが伝わってくる演奏を私は魅力的だと思います。もちろん、コンクールでは完成度高くまとめることが絶対的に必要ですが、そんな中でも自分の音楽の言葉を持っている才能に出会えるとうれしいし、楽しいですね」 この秋から、自身のデビュー30周年のプロジェクトが続く。「今年の秋から来年までをデビュー30周年として、コンサート活動、CDリリースなどを計画しています。最初が、ゲヴァントハウス弦楽四重奏団とシューマンのピアノ五重奏曲を演奏します。シューマンはデビュー当時によく弾いていた曲なので、30年経って戻ってくる、その時に新しいことを発見できると思います。マエストロ小林とハンガリー国立フィルとも各地で共演させていただきますし、11月13日には東京文化会館小ホールでリサイタルも行います。そして来年に向けて、ますます充実させていきたいと思っています」 《響の森》vol.38・第14回東京音楽コンクール仲道郁代取材・文/山田治生(音楽評論家)(ピアノ)interview 03デビュー30周年を迎えた仲道郁代。この夏、東京文化会館に「響の森」ソリストと「東京音楽コンクール」審査員として登場する。 8月の東京文化会館《響の森》コンサートに仲道郁代が登場する。東京文化会館音楽監督・小林研一郎&東京都交響楽団との共演で弾くのは、グリーグのピアノ協奏曲。北欧の抒情に満ちた、真夏に聴くにぴったりの名曲だ。 「グリーグのピアノ協奏曲は思い出の多い曲で、マエストロ小林とは、日本フィルのアメリカ公演(1990年)でも演奏しました。第3楽章のフルートのソロが出るところでマエストロが虚空を指差して、お客さまの方に指を向けられるのがカッコよくて(笑)。ノルウェイの澄んだ空気が目に見えるようでゾクゾクします。 私の母がこの曲が大好きで、私がおなかにいる頃に毎日聴いていたらしいんですよ。そのせいあってか、私も無性に好きな曲です(笑)。私がこの曲を最初に弾いたのは小学校6年生のときでした。中学1年生のとき、父の仕事の関係で家族でアメリカに渡り、日本人が一人しかいない公立中学校に入りました。日本人が珍しくて、みんなが私を見に来るようなところでしたが、友だちはなかなかできませんでした。音楽の時間に、先生に『ピアノが弾けるのなら、何か弾いてごらん』と言われて、ちょうどその頃練習していたグリーグのピアノ協奏曲の第3楽章を弾いたのです。演奏が終わったら、みんなスタンディングオべーションで、それから友人ができました。すごくうれしかったですね。 グリーグは、『ベートーヴェンのようにではなく、日々の生活の中から今の人に伝えたいことがある』と話したそうです。彼の日常の思いや生活や時代や風土を誇張しないで素直にそのまま書いた作品。だからグリーグの世界には入りやすいし、グリーグの作品には心を寄せやすいと思うのです。第2楽章は透明な空気にのって美しい旋律が遠くから聞こえてきます。第3楽章の踊りのリズムは人間古来のダンスをしたいという衝動が表れていて、ノルウェイの人たちの息吹が感じられます」 グリーグのピアノ協奏曲は、衝撃的な冒頭などから、シューマンのピアノ協奏曲との類似で語られることが多いが、仲道は、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」からの影響が大きいと考える。 「グリーグはクララ・シューマンの弾くシューマンのピアノ協奏《響の森》 ・東京音楽コンクール

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