音脈 Vol.57|東京文化会館公演情報 2015年1月~3月
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7音脈2015 WINTER 特集・出演者インタビュー©青柳 聡 「東京文化会館小ホールの響きは、独特の格調があって大好きです。50年以上もの間、さまざまな音楽が奏でられ、お客様が集って素晴らしい時間を作り出したのでしょう。その歳月の中で生音と響きのブレンドが熟成し、薫り高い音になったのでしょうね。ですから川久保賜紀さんとのデュオ・リサイタルは、今からとても楽しみにしているんです」  まさに<プラチナ>のタイトルにふさわしく、輝かしくも高貴なクラシック音楽の真髄をお楽しみいただけるコンサート・シリーズの4回目。共にドイツ音楽への造詣が深い仲道郁代と川久保賜紀のデュオ・リサイタルは、ベートーヴェンとブラームスに焦点を当てるという直球勝負だ。  「どちらの作曲家もドイツ音楽の軸になっていて、重々しくしかめっ面をしているようなイメージがありますが、今回は優しさや温かさがあり、まるで2人の心の中にある花を表現しているような作品を選びました。花といっても美しく咲き誇っているだけではなく、ひそやかに咲いている花や春の訪れを告げてくれる花など多彩です。ヴァイオリン・ソナタ『春』は自然の息吹であると同時に、心の中での芽生えを感じますし、ピアノ・ソナタ『ワルトシュタイン』を私は<十字架ソナタ>と呼んでいるのですが、第2楽章のオーロラにたとえられえる部分は、天から花開いたものが降りてくるように感じられます。ブラームスが50代後半に差し掛かった時期に作曲している『間奏曲』、特に作品118の2は涙がポトリポトリと落ちて、そこに花が咲くようなイメージ。そして『雨の歌』と呼ばれているヴァイオリン・ソナタは、一歩一歩をふみしめながら歩き、その心模様が織りなして生まれる花。聴いたことがない曲であっても、こうしたイメージによって親しみを感じることもあるでしょう。川久保さんとは何度か共演していますけれど、演奏に関するいろいろなアイデアを試したり共有したりできる方なので、さらに新しいアプローチが生まれるかもしれません」  ベートーヴェンといえば、ピアノ・ソナタはもちろんピアノ協奏曲や室内楽など、仲道にとっては全レパートリーの中核をなす作曲家だと言える。特にピアノ・ソナタは全32曲を演奏するシリーズを行ったほか、通常のコンサートでも弾く機会が多い。しかし今でも新しい発見があり、敬意を表すべきベートーヴェンの“こだわりぶり”を感じているという。 「先日も1802年に書かれた『ハイリゲンシュタットの遺書』の全文を読んでシェイクスピアの『テンペスト』との共通点を見出し、あらためて同じ年に作曲されたピアノ・ソナタ『テンペスト』に興味がわきました。ほかにも『ハンマークラヴィーア』ソナタと交響曲第9番との関係や、『ワルトシュタイン』とピアノ・ソナタ第3番との関係など、興味は尽きないですね。ベートーヴェンはひとつのアイデアや素材を他の曲に引用・展開させたり、変貌させたりすることが得意ですけれど、その過程や関係を探りながら『なぜこの曲で、このような使い方をしたのか』を追究すると、その作品を書こうとした着想やアイデアなどが発見できるんです。ですから今後もじっくりと研究しながら演奏していくつもりです。それにベートーヴェンに対する視点や楽譜の読み方が変わると、彼に影響を受けたすべての作曲家たちに対する目も変わってきますし、もう一度楽譜を見返して……となれば、人生1回じゃ足りませんね」  今回はコンサートのほか、ピアノの仕組みや、ピアニストがホールをどのように響かせるかというノウハウもわかるワークショップを開催。ホールの音響をよく知る方にとっても、新しい発見があるはずだ。最近ではフォルテピアノなどを使ったワークショップやレクチャーなども行っている仲道だけに、興味深い話が聞けるに違いない。interview 03ドイツ音楽を支える2人の作曲家へ新しい光を。 音楽の中に咲くさまざまな花と美を求めた、 新鮮なデュオ・リサイタルを開催。プラチナ・シリーズ 第4回仲道郁代(ピアノ)取材・文/オヤマダアツシ(音楽ライター)"Music Weeks in TOKYO 2014"

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