音脈 Vol.56|東京文化会館公演情報 2014年10月~12月
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音脈2014 AUTUMN4©青柳 聡新境地を拓いたコンサート 音楽家にとって、新境地を拓くとはいかなることなのだろうか。今や世界的に活躍している小曽根真が、昨年10月に東京文化会館とパルテノン多摩で行ったコンサートでは、まさにこの問いの答えとなることが起こった。コンサートのタイトルは「Jazz meets Classic」。その名の通り、ジャンルを超えた音楽の魅力を、聴衆は存分に体感した。ジャズ界の巨匠であるクラリネット&サクソフォン奏者、パキート・デリベラを迎え、第1部でクラシック音楽を演奏し、第2部では小曽根とデリベラによるジャズ・セッションという特別なプログラムだった。この日演奏された曲は、モーツァルトの「クラリネット協奏曲」やラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」など。特にこの日の「パガニーニ」は、彼自身がこれまでに手がけた「パガニーニ」とは、一線を画した表現となった。コンサート直前に訪れたニューヨークで聴いた演奏が、小曽根を新境地へと導くきっかけとなったのである。 「ニューヨーク・フィルのコンサートで、ロシア人ピアニストが演奏する『パガニーニ』を聴くことができました。このとき初めて “僕だったらこう弾きたいな”という気持ちが、湧いてきたんです。それは“僕だったらこう弾ける”という対抗心でも、彼の解釈に対する批評や批判精神でもありません。純粋に“こう弾きたい”という気持ちでした。その気持ちに気づいたときに、僕が自分の書いたジャズの曲を弾くときはいつもそうやって弾いているとも、改めて思いました。ジャズだけでなく、クラシックにも挑戦している僕のことを器用に思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、実はクラシックの曲へのアプローチは不器用なんです(笑)。とにかく楽譜に書いてあることをちゃんと弾きたい。けれどこれはとても難しいことで、練習すれば何とか弾けるようにはなりますが、自分なりに曲を解釈して、ここはもう少しこういうふうに弾きたいとなると、明らかにテクニックの壁があって、それを乗り越えるには余裕がなければ思うようには演奏できません。しかし、逆に言えばこれは、弾き込んでいけば自由になれるということでもあるんですね。だから、『パガニーニ』も何度か経験を積んだことで、少しずつ前とは違う感じになってきていました。そして、東京文化会館のコンサートを迎えたのです。あのときの演奏を聴いてくれた方がブログで“こうも叙情的で、緩急をつけて余裕しゃくしゃくで弾いていた”と書いたのを読みましたが、もしそう聞こえたのなら、僕の感情がそこにあったということだと思うんです。ニューヨーク・フィルのコンサートを聴いて意識したことが表現できたという意味で、昨年の東京文化会館でのコンサートは僕にとって大きなターニングポイントだったと思います」 同じ曲を何度か弾く機会を得ることで曲への理解が深まり、自分が見出し、感じたことを表現することができるようになる。こうして小曽根が新境地を拓いた演奏を行うことで、聴衆も新しい景色を見ることができたのである。初共演という起爆剤 あれから1年を経て行われる今年の「Jazz meets Classic」も、ジャズ・トランペット奏者のアルトゥーロ・サンドヴァルを迎え、注目すべき内容となっている。今回も第1部はショスタコーヴィチの「ピアノ協奏曲第1番」などのクラシック音楽を、第2部はジャズ・セッションで構成。お互いに面識はあったものの、初共演となるアルトゥーロ・サンドヴァルとの演奏で、新たに生み出される音楽に期待が高まる。 「ショスタコーヴィチの協奏曲は、これまでに何度か演奏しジャズとクラシックとの出会い。ジャンルを超えた、豊かな音楽の世界を生み出す特別な場である。その起点となるのが、小曽根真だ。interview 02小曽根 真&アルトゥーロ・サンドヴァル “Jazz meets Classic” with 東京都交響楽団小曽根 真 (ピアノ)取材・文/山下シオン(ジャーナリスト)

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