音脈 Vol.42|東京文化会館公演情報 2011年4月~6月
8/24

82011. Spring音脈舞台芸術創造プログラム『万葉集』とは 「クラシックの殿堂」東京文化会館は、今年開館50周年を迎える伝統あるホールとして、日本の歴史や文化を活かしながら、現代に求められる新しい作品を創造するというコンセプトのもと、日本最古の歌集を題材としたオペラ『万葉集』シリーズを制作しています。 毎回『万葉集』に登場するある人物に焦点を当て、その人物の生涯を人気女流俳人・黛まどかが描きます。 今回は、万葉集最大の女流歌人「額田王」の生涯を描いた《明日香風編》の改訂再演と、「大津皇子」と「大伯皇女」のレクイエムを新作初演いたします。千数百年の時を越えて、現代にも貫かれた普遍の愛を黛まどかと千住明が紡ぎ上げます。日本最古の歌集「万葉集」とは 「万葉集」は、西暦700年代後半頃に編まれた、日本最古の歌集です。天皇や貴族から、防人や農民まで、幅広い人々による歌が収められています。全20巻で、なんと約4,500首もの大作です。「万葉集」の編纂と成立については謎に包まれた部分もありますが、何人かの手を経て、最終的に大伴家持の手によって20巻にまとめられたのではないかという説が有力です。『万葉集』 明日香風編 額田王は、のちに天武天皇となる大海人皇子と愛し合い、娘の十市皇女をもうけます。そして額田王の姉である鏡王女は、大海人皇子の兄であり、後に天智天皇となる中大兄皇子と結ばれました。しかし、中大兄皇子は、弟と相思相愛だった額田王を奪い、妻の鏡王女を腹心の中臣鎌足に与えてしまいます。才気に溢れ、気高く美しい「額田王」の波乱万丈なストーリー。『万葉集』 新編(新作初演) 『万葉集』シリーズ第二弾は新作初演。大海人皇子と大田皇女の間に生まれた、大津皇子と大伯皇女の姉弟のレクイエムです。人望に厚く文武両道に秀で、生まれながらにして統治者にふさわしい器を持っていたがために、謀反の疑いを掛けられ無念の死を遂げた「大津皇子」と、姉である「大伯皇女」の愛と悲劇。明日香風編 ココが聴きどころ 明日香風編の中から、聴きどころである額田王による2首をご紹介します。◆熟田津に 船乗りせむと 月待てば 潮もかなひぬ 今は漕ぎ出でな (額田王) 熟田津で、船出のときを見極めようと月を待っていると、潮の流れが理想的になった。さあ、今こそ船出だ ! 当時の朝鮮半島は新羅・高句麗・百済の「三韓」に分かれていて、新羅は唐と組んで百済を攻めていました。皇太子として政権をほぼ任されていた中大兄皇子は、周囲の反対を押し切って、百済救済へと向かいます。救済に向かう船団はしばらく、熟田津(四国の松山辺り)で良い海流を待っていました。そして、待っていた海流が来たときに額田王が歌ったのがこの歌です。 圧倒的に不利な、唐・新羅連合軍との戦争を前に、不安に苛まれていた船団を力づける、生命力に溢れた歌として有名です。◆茜さす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る (額田王) 紫草の生える 御料地の野をいらっしゃるあなた そんなふうに私に手を振っていると 野の番人に見られてしまいますよ◆紫の にほへる妹を 憎くあらば 人妻故に 我恋ひめやも (大海人皇子) 紫草のように美しいあなたを憎いと思ったら 人妻であるのにどうしてこれほど恋焦がれたりするでしょうか 狩りで久しぶりに顔をあわせた額田王と前夫の大海人皇子が狩りの後の宴で交わした歌。このとき既に額田王は、大海人皇子の兄である中大兄皇子の妻でした。にもかかわらず、夫をはじめとする皇族が顔を揃えた宴の席で、これらの歌は堂々と披露されたといわれています。諸説ありますが、額田王と大海人皇子は、離別後も愛し合っていたとされています。 この場面の二人のやり取りは、切なさとときめきと困惑、さまざまな感情が入り混じり、大人の男女の何とも言えない情感を実によく醸し出しています。おおつのみこぬかたのおおきみおおくのひめみこあすかかぜへん平成23年度 舞台芸術創造プログラム オペラ〔演奏会形式〕万葉集明日香風編〈2011改訂版〉 & 新編(新作初演)〈音楽/千住明 台本/黛まどか〉むらさきのにほへるいもをにくくあらばひとづまゆゑにあれこひめやもきみがそでふるのもりはみずやしめのゆきあかねさすむらさきのゆきにぎたつにふなのりせむとつきまてばしほもかなひぬいまはこぎいでな東京文化会館舞台芸術創造プログラム

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です