音脈 Vol.40|東京文化会館公演情報 2010年10月~12月
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音脈2010. Autumn9あったからだ。1960年代には、それまで散発的だった外来の名指揮者や楽団の来日が次第に増えてくるとともに(もちろん今日の状況からみれば比較にならないほど少ないが)、東京の楽団もすでに存在していたNHK交響楽団、東京交響楽団、東京フィル、日本フィルなどのほかに新たに読売日本交響楽団や東京都交響楽団が創立され、互いの競争の中でそれぞれ活動を活発化させていた。まさにそうした時に、オーケストラにとって最適な東京文化会館という新しいホールが機能し始めたわけで、過度な残響がない明晰な音響は外来の名門オーケストラの美質を余すところなく現わし出し、ごまかしのきかないその“怖い”響きの特性によって東京の楽団はその技量を鍛え上げていくことになる。もちろん聴衆もこのホールのそうした特性ゆえに、オーケストラを聴く鋭敏な耳というものを培っていくことができた。東京文化会館の存在あってこそ、その後から今日に至るまでのオーケストラ界の隆盛が可能となったといっても決して過言ではないだろう。 私自身もまさに東京文化会館によって、オーケストラ音楽の楽しさを知り、それを聴く耳を育まれたひとりである。1961年の東京文化会館開館時はまだ幼少だったので、残念ながら草創期の様子は知らないが、それでも1966年には親に連れられてこの会場を時折り訪れるようになった。ただ最初にここで聴いたのが何の演奏会だったかは記憶がない。覚えているのは、それまで日本フィルの放送用コンサートを聴きによく出かけていた自宅近くの渋谷公会堂とはまったく違って、子供心にもなにか格調の高さのようなものが建物、ロビー、場内を支配していると感じたことだ。聴いている人たちも真剣そのもので、ここは身を入れて音楽を聴く場なのだという意識を植え付けられたものである。この1966年にはっきりと覚えている東京文化会館の演奏会、それは10月のミュンシュ指揮フランス国立放送管弦楽団によるものだった。3階か4階のライト席から乗り出すように舞台を観た記憶があるのだが、前半のルーセルの交響曲にはなにかとっつきにくさを感じながらもこれまでに接したことのないきらきらしたものがその音から発せられているのに驚き、後半のブラームスに至っては舞台上のミュンシュの放つ得も言われぬパワーのようなものに完全に自分が包み込まれてしまった。もちろん何もわからない歳ごろなので今の耳で聴いたらはたしてどういう演奏だったのだろうとも思うが、それまでに触れていた演奏会とはまったく次元の違った、指揮者とオーケストラが一体となって生み出す演奏の持つ1966年10月 シャルル・ミュンシュ指揮 フランス国立放送管弦楽団 Ⓒ竹原伸治

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