音脈 Vol.38|東京文化会館公園情報 2010年4月~6月
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音脈2010. Spring8東京文化会館50周年に向けて東京文化会館への感謝三浦雅士 東京文化会館には心から感謝していると公言して憚らないのは、同じような思いを持っている友人が他に何人もいるからであり、想像するにオペラやバレエを愛する多くの人がそう思っているに違いないからである。 出来て間もない1960年代や70年代ならいざ知らず、半世紀を経た現在もなお、東京文化会館が東京でいちばんいいオペラハウスだと断言せざるをえないのは、嬉しいような悲しいような複雑な気持だが、事実だからしようがない。オーケストラ演奏に関してこそサントリーホールが出来て一歩を譲るが、オペラ、バレエに関しては、数々のホールが出来たにもかかわらず、東京文化会館の地位は不動である。 何よりも華やかさ、いや、晴れやかさで勝っている。晴れやかさは舞台と客席の位置関係、客席数、オーケストラ席の傾斜度など、それこそ全体的な条件と雰囲気から醸し出されるわけだが、いちばん重要なのはロビーで、これほど晴れやかに出来ている空間は他のホールや劇場にはないと思う。パリ、ロンドン、ニューヨーク、モスクワ、ペテルブルグなど、主だった都市のオペラハウスを知っているにすぎないが、世界的に見てもそうではないかと思うのである。 何よりもまず広く大きい。客席へは降りてゆく感じだから、休憩時間にはロビーに上がる感じになる。階段があってさらに一段高くなった空間があり、その向こうに屋外のロビーが広がり、西洋美術館が見え、空と樹が見える。まさに演劇的空間で、オペラやバレエを観るにこれほどふさわしい環境はない。 頻繁に通うようになったのは20年ほど前からにすぎないが、それでも何度も決定的な体験をしている。1989年、ノイマイヤーの『月に寄せる七つの俳句』を東京バレエ団が世界初演したとき。1992年、ロイヤル・バレエの『ラ・バヤデール』で熊川哲也が信じられない跳躍を見せて観客が息を呑み、その後に劇場が割れんばかりの拍手に包まれたとき。そういえば、1996年、「オールスター・バレエ・ガラ」でプリセツカヤが最後の『瀕死の白鳥』を踊ったときにも、腕の動きがあまりに完璧で、腕が面に、つまり白鳥の翼に見えて、驚きの声で会場がどよめいたのだった。ドンの『ボレロ』、フェリの『ロミオとジュリエット』、マラーホフの『ジゼル』、ボッカの『ドン・キホーテ』そのほか、数え上げれば切りがないが、しかし、何と言っても忘れられないのは、三年に一度の「世界バレエフェスティバル」である。東京文化会館は2011年に開館50周年を迎えます。これまでハード面(建築・音響)や当館に事務所や練習場がある東京都交響楽団について掲載しましたが、今回は舞踊評論家の三浦雅士氏から、バレエの上演に関する記事をご寄稿いただきました。1992年 英国ロイヤル・バレエ「ラ・バヤデール」 ⓒphoto_Kiyonori Hasegawa1989年 東京バレエ団「月に寄せる七つの俳句」 ⓒphoto_Kiyonori Hasegawa今回は、東京文化会館のバレエ公演関係に詳しい三浦雅士氏にご寄稿いただきました。

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